英才教育を受けるウィーナー
モルツ博士が提唱したサイコ・サイバネティクスの考え方のベースとなる、サイバネティクスという考え方を提唱したのがノーバート・ウィーナー(Norbert Wiener)博士です。ウィーナー博士は、アメリカのミズーリ州コロンビアに1894年11月26日に生まれています。彼は7歳まで父親から厳しい英才教育を施され、アイヤー・ハイスクール(1903~1906年)、タフツ・カレッジ(1906~1909年)、ハーバード大学大学院、コーネル大学大学院を経て、1912年(18歳)に数理論理学に関する論文でPh.D.(博士号)を取得します。
MIT数学科講師に
その後、ケンブリッジ大学(イギリス)のバートランド・ラッセルやゲッティンゲン大学(ドイツ)のダフィット・ヒルベルトやエトムント・ランダウの下で学びを深めます。アメリカに戻った彼は、ハーバード大学やゼネラル・エレクトリック社等で働き、やがて24歳でマサチューセッツ工科大学数学科の講師となります。
サイバネティクスの構築
彼は、第二次世界大戦中に行った射撃制御装置に関する研究を通してサイバネティクス理論を構築することになります。(『ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信』)さらに、ロボット工学やオートメーションなどの分野にも研究成果を出しています。一方、こうした研究は人間機械論という考え方へと導かれることになります。人間機械論というのは、18世紀のフランスの哲学者ジュリアン・オフレ・ド・ラ・メトリーが提唱した唯物論思想ですが、こうした流れにも繋がるものでした。(『人間機械論』ラ・メトリー著)
人間機械論-人間の人間的な利用
ウィーナー博士もラ・メトリー同様に、1950年に『人間機械論-人間の人間的な利用』というタイトルの書籍を刊行しています。そこで彼は、学歴社会を批判し、人間と他の動物の決定的な違いは学習である、と述べています。ただし、人間機械論という唯物的な考え方そのものには注意する必要があります。その後、ウィーナー博士は1964年にスウェーデンのストックホルムで69歳の人生を終えることになります。